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佐賀地方裁判所武雄支部 昭和49年(ワ)4号 判決

原告

山崎サミ

被告

坂口久信

ほか二名

主文

一  被告らは各自原告に対し、金五一一万一〇〇〇円とそのうち金四五一万一〇〇〇円に対する昭和四八年五月三一日から残金六〇万円に対する同五一年六月一〇日から、それぞれ支払ずみまで年五分の割合による金員とを支払え。

二  原告のその余の各請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを四分し、その三を原告の、その余を被告らの負担とする。

四  この判決の第一項は、かりに執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告らは各自原告に対し、金一八七六万五六四〇円とこれに対する昭和四八年五月三一日から支払ずみまで年五分の割合による金員とを支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行の宣言。

二  被告ら

1  原告の各請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生

山崎力は、次の交通事故(以下本件事故という)によつて死亡した。

(一) 発生時 昭和四八年五月三〇日午後九時

(二) 発生地 佐賀県藤津郡太良町大字糸岐一〇二四番地先国道二〇七号線道路上

(三) 加害車 普通乗用車(車台登録番号佐四の四六九一)

運転者 被告 坂口久信

(四) 事故の態様

事故発生地において、力が道路を横断中、時速七〇キロメートル以上の速度で走行してきた被告久信運転の加害車によつて、はねとばされ、翌三一日死亡した。

2  帰責事由

被告坂口武彦は加害車を保有し、これを自己のために運行の用に供していた者であるから、自賠法三条により、被告久信は、加害車を運転していた際、運転者として、前方を注視し、歩行者の動静に応じて適切な運転をしうるよう減速して進行し、もつて衝突事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、漫然と前記のとおりの高速度のまま運転して本件事故をひき起こした過失があるから、民法七〇九条により、被告坂口武久は鮮魚仲買人であつて鮮魚店坂口商店の営業を担当していたものであるところ、本件事故は同店使用人である被告久信が同店の業務遂行中に発生させたものであるから、民法七一五条により、各自、本件事故により原告の次の損害を賠償する責任がある。

3  損害

力の死亡による損害の内容は次のとおりである。

(一) 力の受けた損害金 三二九三万一二八〇円

(1) 逸失利益 金二八九三万一二八〇円

力が本件事故により死亡した昭和四八年五月三一日の直前三か月間の一か月平均賃金は金一七万四三八〇円である。

この月収中同人の生活費は金三万四三八〇円を超えることはないので、残額は金一四万円となる。

同人は昭和一三年三月一五日生まれであり、死亡当時三五歳なので、更に後三二年間労働可能であることは明らかであり、年五分の中間利息をホフマン式(単式)により控除すれば、金三一五九万四〇八〇円であり、少なくとも、後二八年間は労働可能であつて、同人が本件事故による死亡によつて喪失した得べかりし利益は、金二八九三万一二八〇円を下ることはない。

(2) 慰謝料 金四〇〇万円

本件事故により、まだ若くして死亡した同人の無念の思いを考えると、慰謝料として、金四〇〇万円を下ることはない。

(二) 原告の受けた損害金 一八七六万五六四〇円

(1) 力の相続分 金一六四六万五六四〇円

戸籍によれば、力には、妻山崎桂子がおり、その間に、長女山崎めぐみが出生したごとき記載があるが、長女めぐみは嫡出子ではなく、出産後まもない赤ん坊を施設からもらいうけて嫡出子として出生を届けたものである。したがつて、長女めぐみは相続権がなく、力の母である原告と妻である桂子とが、それぞれ相続分に応じ、力の損害賠償請求権を相続した。その額は、原告において、金一六四六万五六四〇円である。

(2) 葬祭費 金三〇万円

力の葬祭費として原告は金三〇万円を支出した。

(3) 慰謝料 金二〇〇万円

これまで苦労して育ててきた長男を無謀な運転によつて失つた母親の苦しみ、悲しみを慰謝するためには、金二〇〇万円が相当である。

(4) 弁護士費用 金二五〇万円

被告らが、任意の支払に応じないため、本訴提起を原告訴訟代理人に委任したが、その弁護士費用は、着手金成功報酬金の総額として金二五〇万円を支払うことを約した。

(5) 損益相殺

以上の損害のうち、自動車損害賠償責任保険から金五〇〇万円の二分の一である金二五〇万円の支払を受けた。

(6) よつて、本件事故による力の死亡により、原告が被つた損害の総額は、金一八七六万五六四〇円である。

4  そこで、原告は被告らに対し、各自原告に、損害賠償金として金一八七六万五六四〇円とこれに対する不法行為の日の翌日である昭和四八年五月三一日から支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金とを支払うよう求める。

二  請求原因に対する認否

1  認否

(一) 被告ら

(1) 請求原因第3項の(二)の(4)の事実を認める。

(2) 第3項の(二)の(5)の事実を認める。

(3) その余の第3項の損害額及び原告の相続権を争う。ことに、力の月収は不確定であつたばかりでなく、力の毎月の収入から必要経費及び生活費としてそれぞれ金五万円ずつ控除されるべきである。

(二) 被告久信、同武彦

請求原因第1項のうち、(四)の力が道路を横断中であつたことを否認し、その余の事実をすべて認める。

第2項のうち、被告武彦が加害車を保有していたこと、被告久信がこれを運転していたことを認める。

第3項の事実については、損害額を争う。

(三) 被告武久

請求原因第1項の事実を知らない。

第2項の事実を否認する。

被告武久は、被告久信、同武彦の父であるが、本件事故の五年前に同人らと別居し、佐賀県藤津郡太良町大字大浦広江部落でホテル、ドライブインを経営し、被告久信に対する使用及び監督関係はない。

2  被告らの抗弁

(一) (信義則違反ないし権利濫用の抗弁)

めぐみは、力と桂子との間の実子ではなかつたとしても、力が原告の賛成を得て、めぐみを施設から引き取り嫡出子として入籍させたこと、力の死亡に伴う自賠責保険の請求を、原告と桂子とめぐみとの三人で共同でしたこと、桂子とめぐみが力の相続人として被告らとの間に、本件事故に伴う損害賠償請求の調停を成立させたこと、など、の諸事実を総合すると、原告は、めぐみを力の子(相続人)として認める反面において、力に対する自己の相続人としての地位を、桂子、めぐみの母子に、合意のうえで譲つたことを意味するものであり、後日、一転して、力の死亡による相続人としての地位の回復を求め、第三者に対する損害賠償請求権の存在を主張することは、禁反言の法理に照らしてみても著しく信義にもとるものであり、力の意思にも反する権利の濫用といわねばならない。

そうだとすれば、めぐみと力との親子関係を否定すべきでなく、少なくとも、養親子関係を認めるべきである。

しからば、力の第一次的相続人は桂子とめぐみとであつて、原告ではない。

(二) (過失相殺の抗弁)

力は、本件事故当夜、少なくともビール三本を飲み、直立も困難なほど酔つたうえ、暗夜国道の中央線付近をはいかいし、又は、同所にちよ立していたものであり、これが本件事故の直接の原因となつたものであるから、損害の算定にあたり、力の過失がしんしやくされるべきである。

三  抗弁に対する認否

抗弁(一)の事実のうち、自賠責保険金の請求を原告と桂子とめぐみとの三名共同で行使したこと、桂子及びめぐみと被告らとの間に、調停が成立したことを認める。

しかし、めぐみが実子でなく、もとより、養子でもないことを、被告らは知つていて調停を成立させたなど、信義則違反ないし権利濫用の法理の適用される余地はない。

抗弁(二)の事実を否認する。

亡力には、なんら非難されるべき行動はなかつた。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因に対する判断

1  (事故の発生)

請求原因第1項の事実について、被害者力が道路を横断中であつたことを除き、原告と被告久信、同武彦との間では当事者間に争いがなく、被告武久との間でも、弁論の全趣旨により、これを認めることができ、力が道路を横断しようとした際の事故であることは、過失相殺の主張に対する判断で、後記に認定するとおりである。

2  (帰責事由)

請求の原因第2項の、被告武彦、同久信の帰責事由については、原告と同被告らとの間では、当事者間に争いがない。

成立に争いのない乙第四、第五号証に被告武久、同武彦の各本人尋問の結果を総合すると、被告武久は、被告武彦、同久信の父親であるが、昭和二五年ころから、坂口商店の名称で海産物の販売等の鮮魚商を始め、被告武彦は昭和三八年ころから、被告武久の営業を手伝うようになつたこと、昭和四三年一一月から、被告武彦が坂口商店の代表者として、大浦漁業協同組合と仲買人として海産物の取引をするようになつたこと、被告武久は、昭和四四年一二月からドライブインを経営し、昭和四六年六月二〇日から太良観光ホテルを経営し、ドライブインは被告武久の三男の坂口光次郎が経営するようになつたこと、以上の諸事実が認められる。

しかし、また、坂口商店とドライブイン及び観光ホテルとの間には、四キロメートルほどの距離しかなく、昭和四八年の、いわゆる水俣病の水銀汚染による漁業不振対策として、漁業を営む者に政府融資がされた際、被告武久名義で金三〇〇万円の融資を受け、坂口商店の営業収益によつて、返済がされていること、そのほかにも坂口商店の取引金融機関である藤津信用組合から、被告武久名義で金一〇〇万円の融資を受けていること、坂口商店の建物は被告武久の所有名義となつていること、などの諸事実も認められるのであつて、実業家の経営の実態として、多角経営が通常であること、被告武久の信用を利用するだけなら、保証人として関与することでもよいと思われるのに、直接自己の名で融資を受けていること、などをも考慮にいれて、右諸事実を総合して考えれば、被告武久は、表向き被告武彦に営業を任せているけれども、自らは、全く手を引いたのではなく、経営の実権を握つているのではないにしても、少なくとも、実質的に共同経営者として、坂口商店の営業に関与しているものと推認され、右推認を妨げるような事情は存しない。

成立に争いのない乙第九号証、被告久信の本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、被告久信は、被告武久の子であるが昭和四五年に大学を卒業後、間もなく、家業である坂口商店の海産物商を手伝うようになり、被用者として、本件事故をひき起こしたこと、被告久信には、夜間であることに気を許し、前方不注視、減速義務などの注意義務違反の過失があつたことが認められる。

そうすると、前記認定の共同営業者として、被告武久は、民法七一五条の使用者として、被告久信の業務遂行中の過失行為による原告の損害を賠償すべき責任を負うものというべきである。

3  (損害)

(一)  力の損害

(1) 逸失利益

証人田原清六の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第二号証によると、力は、昭和四五年の七月ころから山寿砕石工場に雇用され、自己の大型貨物自動車を同工場からチヤーター料一台につき一六〇円くらいをもらつて提供し、その自動車で、砕石場のプラント(砕石所)から原石山までの約五〇〇メートルの間の構内道路上を、原石運搬の職務に従事し、本件事故の前の三か月間の平均賃金として、少なくとも一か月金一七万四三八〇円を得ていたことが認められる。また、貨物自動車の燃料代等は、自己負担であつたことが認められるのであり、成立に争いのない甲第一号証によると、力は昭和一三年三月一五日生まれで、本件事故当時三五歳であつたことが認められることに照らし、また、成立に争いのない乙第一号証により認められる力が平素酒好きであつたことを考慮に入れると、力の必要経費、生活費として、六割弱の金一〇万円を要したことが経験則上認められる。また力は、平均余命の範囲内で、さらに後二八年間労働が可能であることは明らかであるから、逸失利益の現価をホフマン単式により算出すると、

74,380×12×17.221(ホフマン係数)=15,370,775.76

の数式により、一五三七万円(万円未満は切捨て)となる。

(2) 慰謝料

力自身の、本件事故によつて死亡したことによる慰謝料は、金四〇〇万円を相当と認める。

(3) 以上合計金一九三七万円が、力の損害である。

(二)  原告の損害

(1) 成立に争いのない甲第一号証によれば、原告の長男である力には妻桂子があるほか、力と桂子との長女めぐみ(昭和四七年四月一六日生まれ)が出生と同時に届けられ、戸籍に記載されていることが認められる。

しかし、証人、山崎久光、同松尾栄子の証言によれば、力と桂子との間には子供がなく、桂子が不妊であることから、あらかじめ、施設に申し出て、未婚の女性がめぐみを出生すると同時に、力夫妻においてもらい受け、力と桂子との長女として戸籍上届け出られたこと、原告もともに、めぐみを力と桂子との実子同様にして育ててきたこと、が認められる。右認定を動かすに足りる証拠はない。

そうだとすると、力とめぐみとの間には、父子関係は存在しないものというのほかなく、めぐみは力の相続人たりえないといわなければならない。

ただ、このように解すると、成立に争いのない甲第一号証の戸籍記載に反することになる。しかし、他人の子を嫡出子としてした出生届に基づく戸籍の記載は絶対の証明力を有するものでなく、親子関係の存否を確認する確定判決が存在しない場合においても、右の記載に反する他の証拠によつて、真実に合致しないものと認められるにおいては、たとえ、本件のような損害賠償請求権の相続権の有無を判断する前提問題としてであつても、その記載の真否を検討し、これに反する証拠に基づいて真実の親子関係の存否を認定判断するを妨げないというべきである。

次に、養親子関係は法定の要式を具備した届出によつて効力を生ずるものであり、未成年者であれば家庭裁判所の許可を得なければならないなど(民法七九八条本文)の成立要件を満たしているか否かについて、届出の受理の際審査しなければならない(民法七九九条)など、未成年者保護のために設けられた強行規定が潜脱される結果を招来するので、嫡出子出生届をもつて養子縁組届とみなすことは許されないものといわなければならない。

かく解すると、出生の秘密が判明して未成年者保護の精神にもとるとの理由で、実子特例法を制定する動きのあることは、立法論として注目に値いするが、ただ、近親相婚の禁止の順守が期待できるかなど、優生学上の問題もあり、ともあれ、現行法上、養親子関係を認めるにおいては、いずれにせよ、戸籍の記載面に、反映させざるをえないのであり、真実の親子関係の存否が判明した以後においては、戸籍は訂正され、実親子、養親子関係が、それぞれ戸籍上に記載されることになろうから、その時点では、出生の秘密が暴かれることに変わりはないのであつて、転換あるいは、ぎせい(擬制)を認めることによつて、出生の秘密が保持され、未成年者の幸福につながるとの論拠は理由がないことといわなければならない。

(2) そこで、力の前記損害賠償請求権は、桂子と原告とが各二分の一の法定相続分の割合で、相続されたものというべきであるから、原告は前記力の損害額金一九三七万円の二分の一である金九六八万五〇〇〇円の賠償請求権を相続により承継取得したということができる。

(3) 請求原因第3項の(2)の葬祭費については、原告において、いついくらの支出をしたか、全く立証がない。

(4) 請求原因第3項の(3)の慰謝料として、金二〇〇万円を相当と認める。

(5) 請求原因第3項(5)の損益相殺の項の主張事実については当事者間に争いがない。また、第3項(4)の弁護士報酬契約の主張事実についても、当事者間に争いがないが、そのうちいくらを妥当とすべきかについては、抗弁に対する判断の後に判断することとする。

二  抗弁に対する判断

(一)  証人山崎久光、同松尾栄子の各証言、成立に争いのない乙第一号証に弁論の全趣旨を総合すると、力と桂子との間には、結婚後一〇年くらい子供ができなかつたため、力夫婦は、右両証人及び原告に相談して協議のうえ原告らの積極的賛成を得て施設から跡取りとして親のない子をもらうことにして、前記認定のとおり出生届をして入籍させたこと、力夫婦及び原告は、めぐみを実の子及び孫と同様に育ててきたこと、本件事故による力の死亡に伴う自賠責保険の請求手続は、原告と桂子とめぐみとの共同でして、保険金が受領されたこと、桂子はめぐみを連れて再婚し、佐賀県鹿島市に居住していること、桂子とめぐみは被告久信、同武彦との間に、本件事故による損害賠償請求の調停手続において、総額金一五〇万円で調停が成立したこと、以上の諸事実を認めることができる。

右事実を総合すると、力はめぐみを施設から引き取り嫡出子として入籍するに際しては真実の親子関係を生ぜしめる意思をもつていたし、その後も強くその意思を持つていたことがうかがわれないではない。

しかし、原告においては、自分より先に力が死亡し、その相続問題が起きた際、めぐみと桂子が相続し、自らは、相続権を行使しえなくなることを予測し、あらかじめその相続人としての地位を放棄する意思を表明していたとはいえないし、そのような放棄が許されるともいえないので、原告の信義則、権利濫用の主張は、その前提の主張自体理由がない。

(二)  成立に争いのない、乙第二号証、第三号証の一、二、第六号証、第七ないし九号証、証人川尻チミヨ、同緒方学、同峰下真澄、同坂口敏郎の各証言を総合すると、力は、昭和四八年五月三〇日午後九時ころ、佐賀県藤津郡太良町大字糸岐七番地にある川尻チミヨ経営のみち食堂で、ビール三本と、ホルモン料理一さらとを飲食し、本件事故の直前には、同所一〇二四番地の一にある大野自動車整備工場に立ち寄つた後、その先にある空き地前の本件事故現場付近国道二〇七号線上を右空き地方面から横断しようとして、道路の中央線付近まで、有明海に向かい歩行していたこと、そして、同国道上を鹿島方面から大浦方面に向かい走行する自動車に手を振つたりして、かなり酔つており、いつたん、中央線から海寄りに出ていて、自動車がこれを避けてハンドルを右に切り対向コースを通過したこともあること、力はその後、後退して、中央線から山寄りの方で、横断するのをためらつていたこと、その動作には危険が感じられたこと(その点につき、危険は感じられなかつたとの証人峰下真澄の証言部分は、前記乙第八号証及びその余の前顕各証拠に照らし、信用できない)、以上の事実が認められ、ほかに、右認定を動かすに足りる証拠はない。

右国道は幅員五・六メートルで、鹿島方面に向かいゆるやかな右カーブとなつていて、歩車道の区別はないけれども、夜間、飲酒のうえ、横断歩道でないところを、国道上に進出し、うろたえたりすることは、まことに危険なことであり、本件事故の発生については、被害者にも大なる過失があり、加害車の運転者である被告久信の過失との割合は、被告久信が六、被害者が四であると認める。

それゆえ、本件損害賠償金額の算定にあたつては、四割を控除するのが相当である。

三  まとめ

(一)  以上の説示に従つて、その賠償額を算定すると、次のとおりになる。

(9,685,000+2,000,000)×0.6-2,500,000+弁護士費用=4,511,000+弁護士費用

(二)  そこで、最後に弁護士費用について判断するに、弁護士費用については、事件の難易度、被告らの抗争の態度、認容額そのほか、いつさいの事情を考慮し、金六〇万円が、本件事故と相当因果関係のある損害額と認める。

(三)  以上のしだいで、原告の本訴各請求は、被告ら各自に対し、合計金五一一万一〇〇〇円と、そのうち弁護士費用を除く金四五一万一〇〇〇円に対する本件事故の日の翌日である昭和四八年五月三一日から、弁護士費用金六〇万円に対する判決言渡しの日の翌日であること記録上明らかな昭和五一年六月一〇日から、それぞれ支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金との支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九二条本文を、仮執行の宣言につき、同法一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 知念義光)

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